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市民の使命は重く大きく、誇らしい
今年8月、世界連邦の実現を日本の平和政策に盛り込むことを政府に求めるとの一文を含んだ「戦後60年決議」が
衆議院で採択されました。このことを新聞報道で知ったとき、本当に驚くと同時に、心から感動しました。世界連邦を目指すことが、私たちの国の国是になった
からです。
私は、アメリカで9・11の大惨事が起こった2001年12月に、「世界がもし100人の村だったら」という小さな絵本を出しました。
出版の理由は『お金が欲しかったから』です。
印税で「100人村基金」
絵本の話は、私が創作したものではありません。10年以上、インターネットのEメールなどを通して、世界中の市民の間で読み継がれ、
また書き変えられて出来上がった、あるメッセージを書き直したものです。
そのメールが日本に入ってから半年たったころ、9・11事件が起き、その影響を受けて、日本でもこのメールを友人・知人に配信することが大流行し、
私にも友人から届きました。
実は、本当にお恥ずかしい話ですが、あの9・11事件が起きるまで、私は世界の諸問題や平和について、そんなに関心がある方ではありませんでした。
9・11事件にショックを受け、自分にも何か世界の平和のためにできることはないか、と思うようになりました。
そこで考えたのは、お金を寄付することなら私にもできるかもしれない、ということです。
私は本の世界で仕事をしています。それで、そのメールを本にして、それで得た印税収入を、平和のために使っていただこうと思いました。
幸い、本は131万部も売れて、税金を差し引いた収入のすべてを使い、「100人村基金」を立ち上げました。基金は約3500万円集まり、
困窮している世界の人々のために活動されている、日本のNGO(非政府組織)などに受け入れていただきました。
先日ある弁護士事務所に50万円を送金し、基金は底をつきました。その弁護士事務所は、死が待ちうける本国に強制送還されようとしている
「難民認定申請者」を、保証金を払って解放する活動をしておられます。結局、日本に逃げてきた難民の方々を政府の強制収容所から救うなどのために、
基金の大半は消えました。
日本は国際法の厳守を
世界連邦に至るロードマップ(道筋)には、いろいろなものがあると思います。その中で欠かせないことの一つは、各国が各種の国際法をきちっと守る、
ということだと思います。
しかし、残念ながら日本はまだそういう国になっていません。30年近く前に国際難民条約を批准(※注1)しているのに、それを守っていません。
「難民鎖国」といわれて久しく、難民の受け入れ率は、G7(主要先進7カ国)中最低です。
国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民として認定されている人たちが日本に入国しても、難民として認定されず強制送還される事態も起こっています。
これに対しては国連も当惑し、日本政府に対して改善を求める異例の声明を出しています。世界が一つの法的な秩序の下で世界連邦を実現させるまでには、こうした現実を一つ一つ解決していかなければなりません。
しばしば「官と民」という言葉が使われます。これは、政府(行政機関)と民間企業という意味です。しかし、本当はもう一つ、市民という、第三の領域があります。
この三つの領域がバランスをとって働くことで、安定した社会が生まれるのだと思います。そういう意味で、今回の国会決議の実現にも言えますが、市民の義務や使命は大変に重く、そして誇らしいものだと思います。国際法の厳守を政府に求め続けることは、私たち市民の大切な義務だと思います。
世界に広がる非核兵器地帯
また、世界各地で非核兵器地帯(※注2)を拡大させていくことも、世界連邦実現に欠かせない、大きな道筋の一つだと思います。
非核兵器地帯とは、「核兵器を持たない、作らない、持ち込まない」ことを宣言した日本の「非核三原則」によく似た考え方です。
非核地帯は、世界中にかなりの広がりを見せています。世界で最初に非核地帯になったのは南極で、1959年のことです。その後、ラテンアメリカ、南太平洋、アフリカ、東南アジアが非核地帯になりました。
また、モンゴルは自分たち一国だけで「非核兵器国」を宣言し98年の国連総会で「一国非核の地位」が認められました。これはすごいことだと思います。
こういう非核兵器地帯を全世界に広げ、アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスという、国連の安全保障理事会の常任理事国でもある
核保有5カ国を封じ込めて、自分たち同士でしか核兵器を使用できないようにしてしまうわけです。
先の6カ国協議で、北朝鮮が核を完全放棄し、アメリカは北朝鮮を攻撃しないことをうたった共同声明が発表されたことには感銘を受けました。こうした流れに日本も積極的に参加して、東アジアに非核地帯を作ることは、十分可能だと思います。当事国を含め、朝鮮半島の非核化に反対している国はなく、また日本にはすでに非核三原則があるのですから。
『口を動かす』こと
もう一つ、今、世界連邦実現に向けて私たちができることに、『口を動かす』ことがあると思います。
これは、世界連邦を語り継ぐという意味だけではなく、世界の食糧事情を考えて、私たちの食べ物を選び、よい方向にお金を使うことで世界を変えるということです。
日本は食糧自給率が非常に低く、重さにすると80%を輸入に頼っています。海外から食糧を運ぶには石油が必要ですが、
今起こっている戦争の陰には石油のにおいがします(※注3)。石油を少しでも使わないことは、世界の平和につながります。
また、日本は水が豊富ですが、世界的に見ると水は貴重な資源です。地球が直径1.5メートルの球だとしたら、きれいな水は大さじ一杯しかありません。水資源をめぐる戦争も始まっています。
80%の輸入食糧の生産に必要な貴重な水を、日本は海外で奪っています。たとえば、ヤングコーンは南インドなどで栽培されています。
そこでは、ヤングコーン栽培用の水確保のために、村人たちが生活用水を得ていた井戸が奪われ、村人が病気でたくさん死ぬ事態が起こっています。
こんなことを続けていれば、食糧と一緒に世界の人々から恨みも買うことになりかねません。私たちの毎日の食べ物を、ちょっと工夫して選んで口に入れる。つまり、なるべく地元でとれたものを消費する地産地消が、世界の誰も踏みつけにしないことにつながります。世界規模で物事を考え、身近な所で行動する、ということが大事だと思います。
コツコツと努力を
さて、このたびの「戦後60年決議」は、皆さまがコツコツと努力して来られた結果、実現したのだと思います。
「世界がもし100人の村だったら」は1冊売れると、税引き後30円近くの収入が残ります。「塵も積もれば山となる」といいます。
この本をお読みくださった皆さまお一人お一人の30円が、積もり積もった3500万円だったんですね。
私たち市民は決して「無力」なのではなく、「微力」なのです。いち早く「世界市民」という自覚を持たれた、世界連邦運動の皆さまと一緒に、私もこの言葉の意味をかみしめ、平和のために自分のできる努力をコツコツと続けて参りたいと思います。
第25回世界連邦日本大会・広島大会(平成17年10月1日、アステールプラザ)、
テーマ「世界連邦へのロードマップ―被爆60年広島からのアピール」、
基調講演「100人の村の世界」から要旨
編集部注
※注1=批准 主権者が最終的に条約締結に同意すること。
※注2=非核兵器地帯 核兵器の製造、実験、取得、保管などをしないことを約束する非核兵器地帯条約としては、南極条約(1959)、
ラテンアメリカ核兵器禁止条約(67)、東南アジア非核兵器地帯条約(85)、南太平洋非核地帯条約(85)、アフリカ非核兵器地帯条約(96)、がある。
※注3=石油と戦争 いま戦場となっているアフガニスタンは、中央アジアからアラビア海沿岸のパキスタンに至る、将来の石油パイプラインの経由地と目され、
イラクは世界第2の石油埋蔵量を誇る。
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