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40年かけた撮影で「日本の野生ラン写真展」(主催・京都府立植物園)
「植物に、人の情けにありがとう」

本紙「今月の花」の写真家・神園英彦さん

かみぞの・ひでひこ。1922(大正11)年、鹿児島県出身、京都市在住。1951(昭和26)年、 タキイ種苗(株)出版部勤務。1984(昭和59)年、同社定年退職(以降10年間、同社の「路傍の花カレンダー」の発行、撮影担当)、(株)月刊さつき研究社 「趣味の山野草」編集部勤務、1986(昭和61)年、フリー
(写真右)「日本の野生ラン写真展」会場でphoto

 「40年前、日本の高山植物が持つ、自然体の美しさに惚れました。それが撮影を始めたきっかけ」

 そう語る、植物写真家・神園英彦さんの写真による、「日本の野生ラン写真展〜絶滅の危機を憂う〜」が、 京都府立植物園(京都市左京区)の主催で、9月1日から10日まで同園会館で開催された。

 日本の野生ランは260種で、神園さんが長年かけて撮影に成功した160種の日本のランの中から、52種類の野生ランの写真を展示。 9日には神園さんが講演し、絶滅の危機にある日本の野生ランの魅力と危機的な現状を話し、自然保護を訴えた。

 ランといえば、胡蝶ラン、カトレア、シンビジウムなどの、華やかで堂々とした姿が目に浮かぶが、それらは人工栽培した園芸品種。野生ランは、園芸品種とはまったく趣が異なる。

 ヒメホテイラン、ハツシマラン、キンラン…いずれもが、野生のたくましさと、楚々とした控えめな美しさを併せ持つ。かと思えば「キノコや昆虫のクモに似た、偏屈で独特の顔つき」の、変わった姿をしたランもある。

 しかし、そんな多種多様、魅力的な日本の野生ランや山野草の多くが、絶滅の危機にひんしている。

 環境省の2000年の発表では、日本では野生植物の約4分の1が、絶滅、または絶滅のおそれがあるという。原因は、自然環境の悪化だけでなく、盗掘によるものが大きいといわれている。

 「僕は『盗掘』じゃなく、『拉致』と言っています。もの言わぬ『かわいこちゃん』を拉致するのは絶対にやめてほしい。きっと泣いている」

 地球温暖化の影響なのか、高山植物の生育場所も変化し、以前に比べて高い所に移動している、と話す。自然保護、環境保全が叫ばれて久しいが「私なりに自然保護を訴えても、なかなかこたえません。人間の気持ちは冷たくなり、地球は温暖化している」

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 40代に趣味で山野草を撮り始め、「植物の素晴らしさを世に伝えたかった」と、プロを目指した。

 「ランに限らず、日本の野生植物にはすべて魅力があります。それを知らないのは、もったいない」

 84歳の今も現役だ。各地方の固有植物を『○○美人』と呼び、それを目当てに、命がけで日本全国の山野を飛び回る。突然、クマやハブに出合ったこともあった。

 「植物は絶世の美人。僕の彼女。いつも早く会いたいと家を出ます。女房のことはちょっと忘れてネ」

 ユーモアあふれる話からは、人と植物に寄せる深く温かい愛情が伝わってくる。

 「人はだれも、相手あっての自分。植物に対しても同じ気持ちです。自分の姿勢を正し、相手を尊敬し、謙虚な気持ちで向き合いたい。自然の中でも世の中でも、人間一人の力って知れてます。こうして会場に足を運んでくださった皆さん、また、大勢の先輩・後輩のおかげで、講演できる今日の僕がいます。人情ってうれしいですね。そして、花にありがとう」

 神園さんの目標はまだ先にある。「最終的には野生ラン260種を全部撮りたい」と、情熱は尽きない。

  

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