しんぶんろご しんぶんろご10月号  P1   P2   P3   P4   P5   P6   P7     バックナンバー   TOP 


死刑制度を超えて
在米写真家 トシ・カザマ氏が講演

/他を愛することだけが 社会を変える



(写真右)撮影した写真を前に語るカザマ氏 photo

 「全ての犯罪を減らすためには、どうすれば愛のある社会を築けるのかを考えることが重要だ」

 米国在住の日本人写真家で人類愛善会の活動にも賛同しているトシ・カザマ氏が、8月15日、亀岡市で開催された「大本青年祭」で、 300人の青年を前に語りかけた。

 カザマ氏は1996年からアメリカ、台湾で少年死刑囚の写真を撮り続け、日本でも死刑廃止と犯罪の起きない社会の実現を訴え 続けている。

 現在、世界では80近い国で死刑が行われている。先進国といわれる国で死刑制度を残しているのは、日本とアメリカだけ。 死刑廃止は、国際的な流れとなりつつあるが、日本では国民の8割がまだ死刑賛成派だという。

 これについてカザマ氏は、「自分たちの選んだ『死刑』という方法で、人間がどのように殺されているのか、 その現実を知らないまま、安易に賛成している。そこがとても怖い」と話す。

 そして、被害者は当然死刑を望むだろうという一般的な見方を否定。「いかに自分が被害者や遺族だったら、と想像してみても、 被害者の感情には決してなり得ない。被害者の癒やしとなるのは死刑ではなく愛だ」と強調した。

 15歳で渡米し、アメリカで3児の父となった。銃、犯罪、人種差別、教育格差など、アメリカ社会の矛盾に、父として、 写真家として向き合おうとしたとき、死刑制度の問題にたどり着いた。米国では20人の少年死刑囚を撮ったが、撮影前日は一睡もできず、 撮影後、無意識に涙があふれることもあった。

 そして、少年死刑囚の背景には必ずといってよいほど、愛情に恵まれない家庭環境や社会環境があったという。

 3年前、自らも米国で暴漢に襲われた。今もその後遺症に、自らも、家族も苦しんでいる。しかし、決して復讐を望まない。親の復讐心が子供を歪ませ、家庭が崩壊した被害者家族を見てきたからだ。

 「犯人が人生のどこかで大きな、惜しみのない愛に接することができて初めて、僕や僕たち家族に何をしたのかが分かる。その時に謝ってほしい。願いはそれだけ」

 講演後の質疑応答で、ある青年は、「私の友人は理由を問われることなく教師に怒られ、それで終わりだった。本人の改心とは無関係に、死ぬことで解決と見なされる死刑制度も、それと同じだと感じた」と述べた。

 犯罪の増加とともに厳罰化を求める、現在の国内世論も、その教師の叱責に似ていないだろうか。

 「刑に頼りすぎて、社会として犯罪に対する根本的な抑止力を無くしてしまっている。犯罪者、被害者一人一人にとって、何が最善か、何が必要かを考えなければならない。社会は労力を払い、試行錯誤して初めて、犯罪防止のための工夫ができる」

 カザマ氏は死刑制度の限界をそう訴えた。

 そして、自分や家族が加害者、被害者になることから遠ざかるための、カザマ氏流の処方せんがあると話す。

 「日常の出会いの中で、自分はこの人に何ができるだろうかと考え、自分自身や家族を愛するように相手に接すること。遠い話のようでも、われわれの社会から犯罪をなくすには、それしかできることはないと思う」

 日本の社会も凶悪犯罪の増加におびえ、世界には戦争や紛争、暴力が絶えない。カザマ氏の言葉は、それらを解決に導く、根本的な在り方を語っているように感じた。

(本紙・出口美鈴)

 


●新風Nova Vento●


  今年の「中秋の名月」は10月6日(旧8月15日)らしい。本紙がお手元に届くころには、 柔らかな月光が、平和な日本の秋の夜を照らしていることだろう▼

 古都・京都には名月がよく似合う。和の心、日本の美、平和な静けさを求めて、この秋も多くの観光客が、訪れるに違いない。 この夏の「第8回WCRP世界大会」でも、海外参加者が京都の社寺を巡った▼

 ある朝、大会場でアフリカ人女性と話す機会があった。彼女は長びく内戦に苦しみ、難民を抱えている国から来た。 京都の印象を尋ねると開口一番、「平和な雰囲気はとても素晴らしい。人々も温和でとても親切」と答えた▼

 しかし、平和な日本も長い歴史の中では、何度も動乱期があり、今で言う内戦状態を経験したこともあると話すと、 少し驚いた様子だった▼

 初来日し、同大会の青年大会にも参加した若い彼女にとって、日本滞在で得たものは大きかったようだ。 「国に帰ったら、ぜひみんなに日本のことを伝えたい」。笑顔でそう語った▼

 戦乱を克服し、島国の中で共存体制を確立した日本の歴史をモデルに、世界連邦という平和構想を概説した、 本会発行の小冊子『よくわかる世界連邦』は、昨年10月の初版以降、広く一般市民からの好評も得て、1年を待たず6千部が在庫切れとなった▼

 国内外で今、世界連邦への関心の高まりを感じる。有限の地球上に人類共存の統治体制を敷くことは、決して不可能ではない。 「和」の国・日本こそ、その原動力でありたいと改めて思う。

 


●メディアウォッチ●

CD&DVD「ディマクコンダ」

日本人がアフリカで歌うエイズ予防の歌


 日本からはるか離れたアフリカのマラウイ共和国で、青年海外協力隊員だった日本人青年の作ったエイズの感染拡大予防を呼びかける歌が流行している。今年3月までの3年間マラウイ共和国に派遣されていた山田耕平氏が、現地の若者と話すうちにエイズ予防への意識が低いことを知って歌でメッセージを伝えようと決意。英語で作詞したものを、友人に現地語チェワ語の訳詞と作曲を依頼して「ディマクコンダ」が完成した。?愛してる?という意味の歌は、エイズを発病した恋人たちの物語を歌っている。 

 日本でも彼の活動がテレビや新聞で話題になり、CDとDVDが同時発売。収益の一部は、マラウイ共和国のエイズ検査施設の設立費用として寄付される。さらに、8月にカナダで行われた国際エイズ会議に山田氏が出席して、DVDを上映。歌の輪は、世界へと広がりつつある。

 青年の情熱が生んだ歌の効果は絶大だ。彼の行動力を見習いたい。 (ゆ)

前へ   次へ

バックナンバー

TOP