●ベルギーで世界の言語問題をめぐる夕食討論会●
/ 『一つの国際語・エスペラント』は必ず実現できる
三好鋭郎(みよし えつろう)
(株)スワニー社長・EPA(エスペラント普及会)理事
「言語の不平等も経済格差拡大とテロの原因になる」。
議論を通し、EUの英語推進派論客も問題を認識
(写真)
日本のエスペラント運動100周年を記念して開かれたシンポジウム『日本のエスペラント運動の第2世紀へ向けて』
(第93回日本エスペラント大会・岡山)で、今年5月11日にフランスの「ラ・フィガロ」紙に掲載した、
エスペラント広告を紹介する三好鋭郎さん。
今回の広告ではイギリスの言語学者ロバート・フィリプソン氏への、
自身によるインタビューを紹介。フィリプソン氏はイギリス人でありながら、現在の『英語支配』を問題にしている
2002年9月から私は、フランスのル・モンド紙をはじめ、ヨーロッパ カ国の主要新聞で、エスぺラント普及のための全面広告を続けてまいりました。
その目的は、EU(欧州連合)の公用語にエスペラントを採用してもらうことにあります。世界エスペラント協会(UEA)、欧州エスぺラント連盟(EEU)をはじめ、
各国のエスペラント組織の協力を得て、この事業を進めております。
EUの加盟国数は現在25カ国で、言語的な平等性が保障され、全加盟国の言葉が公用語となっていますが、益々英語に一本化されようとしています。
エスペラントの公用語化についての賛否は、一昨年3月にEUの憲法委員会の採決で、賛成12・反対14の僅差で否決されました。続く、4月のEU議会の採決では、
賛成120・反対160という結果でした。否決はされたものの、その差はわずかで、UEAのコルセッティ会長は「エスペラント誕生以来、117年にして初めての快挙だ」と述べています。
フランスがカギを握る
もうあと少し、こうした形勢を逆転させる、最も有効な方法は、フランスを味方につけることだと、私たちは考え、今後の広告活動もフランスの新聞に集中させようと考えています。
英語支配は仕方ない現実だとあきらめる国が多い中で、歴史的に、また現在でも、最も英語を受け入れようとしない国がフランスだからです。ドイツと並ぶEUのリーダー的存在でもあります。
そこで私は、UEAとEEUの協力を得て、フランス語を話す議員108人(フランス・78人、ベルギー・24人、ルクセンブルグ・6人)を、EU本部のあるブリュッセル(ベルギー)のホテルに招待し、「共通語について討論する夕食会」を計画しました。
10月3日にその夕食討論会を開くことにし、ポーランド出身の女性EU議員でエスペランティストのハンドリックさん、EEU会長のオライオンさんが各議員に案内状を送ってくれました。
当日私は夕食会のために現地に飛びました。しかし、開始時間になっても全く議員の参加がありませんでした。議員はみな忙しく、当のハンドリックさんですら遅刻するありさまでした。私は落胆しかけていましたが、ちらほらと参加者が集まりました。
EUの言語委員会で英語化を推進しているフィゲル委員長を、側面から後押ししているハーバード大学のブァン・パーリス教授、多言語主義派と言われるブリュッセル自由大学のビートゥンズ教授、フランスのEU担当外交官など5名が出席しました。彼らはEUを英語に統一するのが唯一の解決方法と考えている議員の代理人たちで、EU内外でリーダーシップをとっている方々でした。
私たちの側は、オライオンEEU会長、同副会長でベルギーのウィッドクト女史、ハンヅリック議員、スロバキアの外交官のラインバルト氏など5名でした。会話はすべてフランス語で行われ、ウィッドクト女史がエスペラントとフランス語の通訳をつとめてくれました。
彼らは、英語推進がいかに世の中にプラスになるかという主張を、延々とするわけです。「英語はすでに広く世界に普及し、それによってビジネスも行われている。だから、英語を世界の共通語にすることが、最も自然である」といった論調です。
オライオン会長は穏やかにしかも力強く説得を続けました。「文法が規則的で例外がほとんどない」「表記と発音が同じで発音記号が必要ない」「それらを総合すると、欧州人にとって英語を勉強する10分の1の労力で習得できる」といった、エスペラントの優位性を述べました。
また、「現在ハンガリーでは毎年、7千人から8千人が大学レベルのエスペラントを身に着けて卒業している」「EUの人々は英語の勉強のために、毎年170億ユーロ(2兆5千億円)をイギリスに支払っている。そんなことを許してもよいのでしょうか」といった反論をされました。2兆5千億円というと、ちょうど瀬戸大橋が二つ半作れる金額です。
英語推進派の理解に変化
私は、インドネシアが人造語の共通語インドネシア語と、740もの異なる地方語を併用して二言語国家として成功した例を述べ、「人類が英語と格闘している間に、英米人だけが先端技術や新規開発に専念できます」と説明し、「ますます貧富の差は広がりテロの横行は止まりません。自然言語とは比較にならないほど楽に習得でき、言語の平等性が保たれ、はじめて真の世界平和への話し合いの端緒が開かれます」と説きました。
オライオン会長は、「EU憲法はすべての加盟国の国民、言語は平等だとしているにもかかわらず、共通語を英語に一本化するというのでは、憲法の精神、民主主義は一体どうなるのでしょうか」などと、友好的な雰囲気を崩さず反論を続けました。
ハンドリック議員は「ポーランドの多くのEU議員は英語ができますが、できない議員は議論に加わることができず、全く蚊帳の外です」と述べました。7時半から夕食をしながら議論が始まり、終わったのは何と夜中の12時40分でした。私は日本から到着した翌日で、5時間を越える議論にくたくたの状態でした。
しかし、英語推進派の彼らも、私たちが日本、ヨーロッパ各国からわざわざ集まり、世界・人類という視点で本気で言語問題に取りくんでいる姿を理解したのか、かなり態度が変わりました。
最終的に、「世界には確かに言語的差別が存在し、政治家や市民を目覚めさせてその問題を議論する価値がある」と、彼らも認めました。そして10月10日、強硬だったパーリス教授夫妻が、オライオン会長宅での昼食招待に応じ、「夕食討論会は大変意義があったと述べた」と、同会長からメールが届きました。
今回の夕食討論会には議員が集まらず失敗かと思われましたが、結果的に、影響力の大きい英語推進派の巨頭たちの考え方や視点を少し変えさせたという意味で、大きい足跡を残せたと思います。
確信を持って運動
私は「一つの国際語・エスペラント」という理想は、必ず実現できるという確信を持っています。なぜなら、出口王仁三郎初代総裁は、今から80年も前に今日のグローバル化した情報化社会の到来を予言され、エスペラントは、世界を統一し、人類に和合と幸福をもたらす言葉であると述べておられるからです。
そして、歴代の総裁・副総裁をはじめ、出口紅現総裁も同じ主旨でエスペラントの大切さを説かれ、自ら学びながら、会員・信徒に学習を奨励してこられたからです。
私は引き続き、エスペラントの広告活動や政治家への啓発活動を推進していきたいと考えております。
(「第93回日本エスペラント大会・岡山」でのシンポジウム報告要旨に加筆)
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