しんぶんろご しんぶんろご12月号 P1   P2   P3   P4   P5   P6   P7     バックナンバー   TOP 


脳死臨調を再設置し議論を  
/臓器移植法改正問題

日本宗教連盟が国会に意見書
2つの改正法案に反対を表明

(写真) 集会には約80人の宗教者、市民、国会議員などが参加。大本からは慶應義塾大学看護医療学部教授で人類愛善会生命倫理問題対策会議顧問の加藤眞三氏が代表して見解を発表。国会議員からは「自分はドナーカードで全臓器提供に同意するつもりだったが、『脳死臓器移植の本当の話』(小松美彦著、PHP新書)を読んで考えが変わり、現在党内で勉強会を開いている」などの声があった

photo

 脳死臓器移植の推進を目的に、「脳死を一律に人の死とし、家族の同意だけで臓器提供を可能にする」「提供可能年令を15歳以上から12歳以上に引き下げる」など、 現行臓器移植法の規制を大幅に緩和する2つの改正法案が、今国会に提出される公算が強まった。

 これを受け、日本宗教連盟(理事長・山北宣久日本キリスト教連合会顧問、略称・日宗連)は11月 16日、2つの改正案の内容に反対する旨の意見書をまとめ、 国会審議にかけるか否かを判断する衆議院厚生労働委員会に提出した。意見書は「未だに脳死を人の死とする国民的合意は得られていない。多数決による拙速審議を避け、 宗教界の意見も含め、改めて社会的に議論すべき」としている。

 平成9(1997)年に臓器移植法が成立する過程では、総理大臣諮問機関の「臨時脳死及び臓器移植調査会(脳死臨調)」が設けられ、 2年間の議論が行われた。そうした経緯を踏まえ、今回の意見書では、同法改正に際しても『第2次脳死臨調』を設け、 宗教界も含め広範な角度から社会的検討を加えることを具体的に求めた。

 日宗連は、教派神道連合会、神社本庁、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、新日本宗教団体連合会の5団体で構成する連絡組織で、 国内の主な宗教・宗派が加盟している。

 97年の臓器移植法の国会審議に際しては、慎重な審議を求める意見書を提出。一旦は衆議院を通過した法案に、参議院で修正を加え、 脳死を一律に人の死としない現行法を成立させる上で大きな役割を果たした。今回の意見書提出もそうした力を発揮することが期待されている。


宗教界の発言に期待

 また同日午後3時から、市民団体「臓器移植法改悪に反対する市民ネットワーク」の呼びかけ、主催による、「脳死を人の死とする『臓器移植法』改悪を考える緊急院内集会―宗教界からの提言―」が、衆議院第一議院会館で開かれた。

 集会では、大本、真宗大谷派、日連宗、立正佼成会の代表が、脳死・臓器移植や移植法改正についての見解を発表。当日参加できなかった浄土宗、曹洞宗、天台宗の見解文も紹介された。

 各宗教団体の見解は、「脳死は一律に人の死とはいえない」「生前の本人の書面による意思表示は絶対に必要」という点で一致。 過去5回にわたる、日宗連主催の脳死臓器移植や生命倫理問題関連のシンポジウム、また、教団付置研究所懇話会の中に昨年発足した生命倫理研究部会の議論を通して共通認識に至り、今回の意見書に反映された。

 今日の社会状況の中、宗教界に対する期待が高まっている。一般参加者として発言した脳死臨調元参与の光石忠敬(みついし ただひろ)弁護士は、「個々の宗教の意見ではなく、宗教界全体の合意として発表していただけることは、大変にありがたく心強い。戦後、教育の中で宗教心が忘れられてきた結果、社会から倫理・道徳が失われた。これからも日本宗教連盟として、生命、倫理・道徳について広く社会に声を発して欲しい」とエールを送った。


日本宗教連盟臓器移植法改正問題に対する意見書

 日本宗教連盟は、「臓器の移植に関する法律」(以下「臓器移植法」)改正をめぐる諸問題に対し、わが国の文化および、国民の人生観と死生観の形成に寄与してきた宗教者の立場から、以下のとおり意見を表明いたします。

 臓器移植法が施行されて9年が経過しましたが、脳死状態であっても心臓が動き、温かい血液が循環し、汗も涙も流す人間の身体を「人の死」とすることに未だに国民的合意は得られておりません。医学界のみならず、科学者、法律家のなかでも「脳死は人の死ではない」とする見解が多く、こうしたなかで改正を強行することは、将来に禍根をのこすものと思料いたします。

 さて、中山太郎衆議院議員らが提出した臓器移植法改正案(A案)は、本人が生前に臓器移植を拒否していない限り、家族の同意で、脳死での臓器移植を可能にするとしています。しかし、人間が生きること・死を迎えることについての考えは、個々人の人生観・死生観によって異なり、人間存在と深くかかわることから、「本人の書面による意思表示」は、脳死・臓器移植にとって欠くことのできない絶対条件であると考えます。

 一方、斉藤鉄夫衆議院議員らが提出した同法改正案(B案)は、臓器提供の年齢制限を「15歳以上」から「12歳以上」に緩める内容となっていますが、 社会的に弱い立場にあり、脳死・臓器移植に十分な理解を持ち得ない子どもの臓器提供は、大人とは別のルールが必要であると考えます。また、 親が子供のいのちにかかわる意思をどこまで代弁することができるのかなど、検討すべき多くの問題をかかえており、これらの問題が解決されていない現状では、15歳未満への拡大に反対します。

 日本宗教連盟は、国民一人ひとりがそのいのちを最後まで人間らしく生き、やがて穏やかに死を迎えることができるよう、幅広く議論を深めていくべきであると考えます。また、この問題が国民の生と死にかかわる問題であることから、十分な議論を経ずに多数決で決するのではなく、宗教界からの意見を含め、慎重に検討を続けられますよう要望いたします。現在提出されているこれらの改正案を国会審議の限られた時間のなかで検討するのではなく、第2次「臨時脳死及び臓器移植調査会」を設置し、脳死判定のあり方も含め、科学的、医学的、法律的、倫理的諸側面において、社会的合意が成立するまで検討を重ねられますよう強く要望いたします。

 なお、10月初め、愛媛県宇和島市で明らかになった生体移植による臓器売買事件では、臓器提供者の「書面による意思表示」がなかったことが大きな問題となっています。この事件後、「脳死からの臓器移植をもっと多くしなくては」などの声が一部で起こりましたが、「書面による意思確認」を含め、法的に規制がなく、移植後のドナー、レシピエントとも健康状態の確認もされてこなかった生体移植にこそ、明確な法規制が必要であることを申し添えます。


 平成18年11月16日

                  財団法人 日本宗教連盟
                     理事長 山北宣久

 

次へ

バックナンバー

TOP