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『主張』

中東和平を考える
 / 中道と寛容の精神で新たな道を

 国際情勢が緊迫の度を高める中で、新年を迎えた。今後の世界状況を大きく左右すると心配されているのが、中東情勢のゆくえである。

 現在、イスラエル・パレスチナの間では、テロと報復攻撃が繰り返されている。さらに、イスラエルは、レバノン国内のイスラム過激派ヒズボラとの抗争も抱え、シリアとも緊張を高めている。また、イラクはイスラムのシーア派とスンニ派の抗争から、実質的に内戦状態にあるという。

 こうした紛争が絡まりあって緊張が中東全域に広がることが懸念されているが、イスラエル・パレスチナの紛争は問題の核心である。

 昨年1月、パレスチナの国会に当たる立法評議会(定数132)の選挙が行われ、初参加のイスラム 原理主義組織ハマスが過半数の76議席(58%)を獲得し、第一党の座を確保。3月にはハマス単独政権が誕生し、従来の「和平プロセス」を破棄。「イスラエルの生存権を承認しない」との強硬路線を全面に押し出した。

 なぜ、和平は実現せず、過激派の支持率も高いのか。その理由は、「双方の政府が相手を犠牲にして 自分を有利にしようとし、お互いに深い猜疑心と不信感を持っている。オスロ合意は履行されず、 パレスチナ人がますます追いつめられているからだ」。昨年11月29日、東京で開かれた「世界連邦平和促進全国宗教者大会」で講演した、アルクドゥス大学(エルサレム)のムンサル・ダジャーニ教授は、パレスチナ人の視点でそう語った。

 教授は、「双方が現在のジレンマから脱却し、和平プロセスを継続するには、イスラム過激派も歩み寄れる、もう一つの選択肢が必要だ」とし、「イスラムワサティア党」設立の計画を発表した。「ワサティア」とは「正義と道の中央」という意味の、コーランから引用した言葉。「妥協、協調、譲歩」という意味も含んでいる。

 「中道」や「中庸」、「寛容」を肯定的に捉える日本人の感覚からは、当たり前の考え方のようにも聞こえるが、イスラム世界では違うという。

 作家の曽野綾子氏もかつて、イスラエル・パレスチナの問題に触れる中で、「協調、妥協、淡白に振舞うこと、などというものは、彼らの美学の中にほとんどないだろう。彼らが戦いに疲れ、精も根も使い果たす、その時まで和平は実現しないだろう」と述べている。

 ダジャーニ教授の和平への試みは、コーランに帰って、共に痛みと犠牲を分かち、相互の信頼を構築する道筋をつけようとするものだ。『中道と寛容』を説く同教授の考え方は、 紛争下の中東社会では極めて画期的なもので、身の危険すら伴いかねないという。

 大会では、中東和平に生涯を捧げた、エジプトの故・サダト大統領の遺志を今の時代に再び生かし、 第3回目となる「シナイ山共同礼拝」を、23年振りに世界の諸宗教に呼びかけることを宣言した。 ユダヤ・キリスト・イスラムの三大一神教をはじめとする、世界の諸宗教の和合を図るとともに、諸宗教による新しい世界平和の枠組み作りをめざしたいという。

 長い歴史の中で、日本の宗教者は中道と寛容の精神で多宗教共存の社会を築いてきた。今こそ日本の宗教者が、中東和平に積極的にかかわり、世界に広がる心の壁の克服に貢献すべきときである。



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