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新刊紹介

『黄砂ふる街』

傘寿を迎えたエスペランティストが贈る 機智とユーモアあふれるエッセイ集

森 真吾・著 海鳥社・刊 定価(本体1600円+税)

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 著者の森真吾さん(81)は、福岡在住のエスペランティスト。 元・福岡市職員で、社会教育課長、市民体育館長、青少年対策課長などを歴任。85年に退職するまでの8年間、同市立動植物園長を務めた。

 地元で「エスペラント伝習所」を開き、後進を育成。1991年から北九州市の大本筑紫本苑を会場に開かれている 「国際エスペラント合宿」(EPAほか共催)の講師も長年務めた。

 当時森さんは、「国際化の分野では、東京は新参者。ペリーの黒船に驚いた、100年ほど前からのこと。北九州地域は、はるか昔から大陸と交流し、国際化していた。北九州こそがアジア諸国との交流活動にふさわしい場所」と、飄々とした面持ちで語っておられた。

 公私共に経験豊かな国際人で、しかも地元の歴史と文化にこだわった、森さんのユニークな人柄や視点は新鮮で、 平成5年の本紙に1年間、エッセイをお寄せいただいた。

 この本は、地元マスコミや全国誌に掲載された、65編の随筆を厳選して収録。本紙連載「落ち穂拾い」からも7編が選ばれている。 韓国や東欧クロアチアのエスペランティストとの交流、海外訪問、動物の話、地元の風物、時の話題、人生の思い出などを題材にした、ほのぼのと温かく、ウィットとユーモアあふれる内容は、読んでいて楽しい。(ま)




●新風Nova Vento●


 「冬来たりなば春遠からじ」という。冬の樹木の梢では、すでに春の新芽の用意が始まっている。 日本の春夏秋冬の営みは、次なる季節を変わりなく迎えている▼

 その自然の様子が近年おかしい。日本の春の風物詩・春霞をもたらす『黄砂』には、中国の工場の煤煙が 大量に混じっているという。春から秋の雷鳴の後には、見たこともない竜巻が襲う▼

 広葉樹林をなぎ倒して、杉や桧の人工林に変えたため、餌となる木の実を失った鹿や猿、熊が、 人里に降って畑の作物を荒らし、時には人家も脅かす。これも見方を変えれば、利益優先で無秩序な経済開発が、 自然の営みを狂わせた結果といってよい▼

 人の生涯の年々の推移も、命が芽生え、花咲き実らせ、枯れていく、自然の営みに通うところがある。 その幼少期は、後の人生を大きく左右する大切な時期である。父母や社会の見守りが必要な幼少期にいじめを受ける、 いまの隠微な世相は問題で、見過ごすことはできない▼

 自然をむしばむ公害のように大人社会を覆う弱肉強食的な在り方、利己主義の風潮と、 結果的にそのしわ寄せを受けた子供たちを取り巻くひどいストレスを、父母も教育現場も皆が一致協力して 取り除いてかからねばならない▼

 子供たち自身にも、冬のさ中に寒風に耐えて芽吹きの準備をする木々の梢のように、 間もなく来る春を信じて忍耐する心を養って欲しい、と切に思う。冬来たりなば春遠からじ、なのだ。

 


●メディアウォッチ●

ニュース「2006年の漢字は『命』」

大切な命へ祈りを込めて


 財団法人日本漢字能力検定協会が全国公募で発表する「今年の漢字」。2006年の世相を表す漢字は『命』と決まり、 京都の清水寺で特大色紙に揮毫された。

 同じく、2位は『悠』、3位『生』、4位『核』、5位『子?』、生死を意識した漢字が上位に選ばれている。 悠仁様ご誕生の吉報の一方で、イジメによる子供たちの自殺や虐待や飲酒運転などによる残忍な死亡事故など、 命に不安を覚える出来事が多いためと報道されている。

 命を粗末に扱いすぎる事件が多い一方、命の大切さを訴えて懸命に活動する人々の姿も増えつつある。 飲酒運転による事故者を免職扱いにする企業が急増。 年以上も愛読されているイジメられた少女の絵本「わたしのいもうと」(偕成社) が新たに話題を呼び、中学生が自主的にイジメ撲滅を目指してオレンジリボンを胸につける運動が始まっている。 社会の関心の高さが人々の意識を変えるパワーにつながる。新たな1年の新たな展開を願うばかりだ。        (ゆ)

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