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世界が求める"憲法第9条"
/戦争放棄と戦力の不保持が恒久平和の礎
日本に寄せる人々の期待 ―日弁連シンポから―
●紛争地からも届く切実な声
去る5月14日、日本国憲法の改正手続きに関する法律"国民投票法"が成立。
"改憲"を可能にする法的整備が終わった。
今後は、改憲と新憲法案に最終的に同意するか否かが、
私たち国民一人ひとりの選択に委ねられることになる。
今こそ私たちは、現憲法について理解を深めておかなければならない。
5月12日、日本弁護士連合会(日弁連)など法曹4団体は、
東京霞ヶ関の弁護士会館を会場に、
第16回憲法記念行事『世界から見た日本国憲法〜国際紛争地域が求める平和の在り方』を開催。
そこでは、国内外の文化人、市民団体代表らが、世界的な視点から日本国憲法第9条を高く評価。
「9条の精神を世界共通の精神に」との発言があいついだ。
開会に当たり、日弁連の平山正剛会長は、「弁護士業務を通じて、
地球環境を守り、平和を守る。国内的には日本国憲法の国民主権、
平和主義、基本的人権尊重の原則を維持発展させるのが弁護士の責務」と、
日弁連の基本姿勢を説明。
基調報告として、ジャン・ユンカーマン氏(アメリカ・映画監督)が
「国際紛争地域が求める平和の在り方」のテーマでスピーチ。
「紛争地域が求めているのは、武力鎮圧ではなく、
貧困克服のための支援と協力であり、医療の充実や技術の移転を求めている。
大戦の廃墟から立ち上がった日本が示してきた支援の数々は、
紛争に明け暮れた国々にとって大きな希望であった」と、日本の人道支援を評価。
日本の憲法改正の動きは極めて国際的な問題であるとして、
「特に第9条(戦力の不保持と交戦権の放棄)を国際的説明を抜きにして改訂するのは、
日本が第二次大戦で多大な被害を与えたアジア諸国への謝罪を放棄することになる」と述べた。
また、自国の対イラク戦争について触れ、
「核時代の今、大国同士の戦争は起こせない。
また、小国の非暴力・抵抗によって大国が敗れることもあるのが現代史の教訓。
インドの対英独立闘争、東欧諸国対旧ソ連、
ベトナム戦争が好例だが、アフガニスタン、
イラクの騒乱も同じだ。アメリカは歴史的教訓に学んでいないし、
イラク戦争は米国憲法、国連憲章、人権保護原則に違反している」と語り、
米国内でもようやくイラク戦争反対の声が大きくなってきたことを伝えた。
ユンカーマン氏は、「日本の憲法改正論の中でも、
海外派兵を可能にする動きは特に危険だ」と指摘。
「戦後60年にわたる日本の"非戦実績"は、誠に貴重で世界に誇るべきものだ。
中東のシリアでは、日本国憲法の中身を知らない国民にとっても、
日本は平和主義の象徴的な存在とされている。
今後、国連常任理事国入りを目指す場合でも、
日本は憲法第9条を掲げて主張すべきだ。
日本は自ら第9条を守るだけでなく、
積極的に国際的支持を求めてゆくべきだと思う」と、第9条と日本への期待を示した。
●問われる日本国民の行動
続くパネル・ディスカッションでは、ジャン・ユンカーマン氏、
韓国聖公会大学日本学科教授の権赫泰氏、イラクの女医ワカル・アブドル・カハル氏、
NGOピース・ボート共同代表の吉岡達也氏が、
コーディネーターの鮎川一信氏(弁護士)の司会で意見を交した。
イラクのカハル女史は、イラク戦争の生々しい記録写真をスクリーンに投影。
「平和の有難さは失って初めて分かる」と、戦争の悲惨さを訴え、
「バグダッドとは平和な場所という意味。すべての宗教も平和を目指している。
人間の自由も平和があって初めて実現できる。平和な日本を支えてきた憲法第9条を、
日本のみならず、全世界に適用していく努力を、日本は率先して行ってほしい」と述べた。
ピースボートの吉岡達也氏は、現地での活動体験を元に、「アラブ諸国は長年にわたり、
日本に深い信頼感を持ってきただけに、イラクへの自衛隊派遣は大きなショックだった。
一般国民は『日本よ、お前もアメリカに軍事協力するのか』という受け取り方だった」と報告。
そして、アフリカ諸国の内戦を、国連のPKO介入で解決できていない現実を指摘。
「日本は、国際社会においても、憲法第9条を掲げて国連改革に乗り出すべき時代が来ている。
安全保障に必要なものは、強大な武力ではなく、ソフトウェアだ。
紛争の予防こそ大事だ。日本人は憲法前文の理念を実現するため、どう行動するかが今問われている」と訴えた。
●アジアの軍拡競争を危ぐ
韓国の権教授は、「日本の憲法第9条の改正問題は他人事とは思えない。
第9条があるのに、日本は今や軍事大国である。
第9条を改正すれば、東北アジアは軍拡競争に突入することになる」との懸念を示し、
「日本国憲法第9条を、東北アジア共通の理念にまで高めるべきだ」と訴えた。
ユンカーマン氏は、「アメリカ国内では、イラク戦争が正確に報道されていない。
爆撃続行の事実などは全く公表されていない。犠牲者は 万人にのぼるとの一部報告もある。
今でも、フセイン元大統領はアルカイダと連絡があったと、80%のアメリカ兵が思い込んでいる」と、
政府が事実を隠ぺいしている点を指摘。
また、「相手の人間を直接に知らないから、平気で殺しに行くことができる。
国際的な相互交流が、世界平和実現の基盤を作る」と、国際的な民間交流の大切さを強調した。
●世界連邦実現をめざし
各氏の発言に共通していたのは、
「日本国憲法第9条を、全世界に平和をもたらす共通理念とするべきだ」との指摘だった。
「国民投票法」が成立したいま、
私たち日本国民は憲法改正問題に真正面から取り組むべき時を迎えている。
すでに本紙6月号『主張』でも述べたように、課題の中心は第9条の取り扱いにある。
国内外に多大な惨禍をもたらし、広島・長崎への原爆投下と日本の敗戦に終わった、
先の大戦への深い反省から生まれた第9条一項・二項は、
究極の平和理念として広く国民の支持を得てきた。
しかしその反面、国の防衛を専らアメリカの軍事力に依存してきた日本の体制は、
朝鮮戦争(昭和25年)を契機として変質を迫られ、すでに自衛隊は実質上の軍隊に成長。
いまや日本はアジアの軍事大国の一つと目されるに至った。
戦争の惨禍を体験していない年代が国民の大半を占める今では、
日本も軍事力強化のために核武装まで視野に入れるべきとの論まで、一部に出てくるようになった。
先行する現実を、このまま黙認しているわけにはいかない。
憲法改正問題を機に、私たちは、
日本と世界の未来を見据えた新しい平和ビジョンを構築しなければならない。
国益を至上として、国と国がしのぎを削る主権国家体制のままでは世界平和はこない。
現在の国際連合は第2次大戦後の世界平和に大きく寄与し、
ユネスコ、ユニセフなどの国連機関は、
文化や福祉の向上その他さまざまな分野に幅広く貢献してきた。
しかし、第2次大戦の戦勝国(連合国)が組織し、
加盟・脱退が自由で、内政不干渉が原則、
しかも当時の5大国(米英仏ロ中)が拒否権を持つ体制では、
5大国の利害が対立する重要問題については、何も決定できない。
192カ国が加盟する現在でも事情は同じだ。
このままでは、国連は世界平和を保障する組織ではありえない。
世界連邦結成と各国の軍備撤廃により、軍事費を貧困克服政策へ投入することこそが、
世界平和実現のカギである。
拒否権を持たない国連加盟国の願いも同様のはずであり、
日本はこれら諸国に働きかけ、世界連邦結成の先頭に立つべきだ。
日本国民の「非戦の誓い」は、世界連邦樹立によってはじめて達成される。
2005年8月2日の、「戦後 年国会決議」は、政府に対し
「世界連邦実現への道の探究など持続可能な人類共生の未来を切り開くための最大限の努力をすべきである」と
宣言している。
憲法改正は、世界連邦結成を国是に掲げる日本の将来像を、世界に問うものとしなければならない。
【国民投票法の概要】
1.有効投票の過半数の賛成があれば改憲を認める
2.項目ごとに賛成・反対を問う
3.18歳以上を投票権者とする
4.公務員・教育者の「地位利用」を禁止する
5.投票2週間前からテレビ・ラジオのCMを禁止する
国会での採決にあたり多数の付帯決議が付されたように、
議論の尽くし切れていない課題が残る内容となった。
例えば、最低有効投票率を定めていないことや、
国民投票の期日を国会が発議した日から起算して60日から180日以内で、
国会が決議した日と定めた「第2条・国民投票の期日」は、
最短であれば60日目もあり得るのは、あまりに国民の間の論議期間としては短かすぎる、
と日弁連が批判していることなどである。
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