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誰にでもわかるパレスチナ問題(その27) 

NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳

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想定外は想定内

国際情勢の把握

 国際情勢は刻々と変化し、世界がどのように進むのかを把握する難しさは誰もが認め るところです。今回は、中東、パレスチナ問題を研究する世界の情報機関や研究所が 完全に把握できなかった2つの事柄を考えたいと思います。

 1つは先月号でも取り上げた2005年8月のイスラエルの一方的ガザ撤退に対する 反対運動。もう1つは2006年1月25日に行われたパレスチナ評議会選挙(国会 に相当)の結果です。


民主主義の成熟度

 2005年8月15日に退去命令、そして23日に完了されたガザ撤退は、ほとんど の専門家の予想に反した平和的撤退であったのではないでしょうか? もちろん撤退 に反対するデモ行進、立ち退きに反対する入植者及びその支持者達とイスラエル軍と の小競合いがなかったとはいえません。

photo  1982年のシナイ半島撤退と比較すれば、 宗教的思い入れの深さゆえ、ガザ、西岸北部の1部からの撤退はかなりの困難と犠牲 を伴うという考えが強調されすぎていたと私は考えています。言い換えれば、シナイ 半島はイスラエルの約束の地ではありませんが、ガザ、西岸は、聖書に出てくるイス ラエルの地なので、それを信じるユダヤ人や入植者から命がけの反対があるとの予測 でした。もちろん撤退が予想以上にスムーズに進んだのは、周到に準備された軍隊の 入植者への態度やこれまでの入植者と軍との信頼関係等様々な理由がありました。

 私は、マスコミその他で語られるイスラエルのイメージがいかにも一部の宗教的原理 主義者を象徴し過ぎていると思います。神からの約束の地を決して手放すべきではな いと考える人達の数は現実にはそんなに大きくないのではないでしょうか? 今回の平和的ガザ撤退はイスラエルの民主主義の成熟度が世界の中東研究者が思う以 上に高かったことに起因するのではないでしょうか?


1番驚いたのはハマス自身

photo  同様に、2006年1月25日、国際社会が注視するなか、複数政党によるパレスチ ナ評議会選挙が民主的に行われ、イスラム原理組織ハマスが第1党になりました (写真中央の人物はイスマエル・ハニヤ パレスチナ暫定政府首相 AFP通信)。
 ハマスの対イスラエル綱領が話題の中心になり、パレスチナ和平プロセスの頓挫がクロー ズアップされています。

 しかしまずアラブ世界で初めての民主的な選挙が行われ、パ レスチナ自治政府を支配してきたファタファがその結果を受け入れ、民主主義のルー ルに則って政権交代が行われたのです。民主主義が唯一絶対的な制度であるかどうか は別の議論ですが、少なくてもパレスチナに民主主義が根付き始めている事は事実と してとらえるべきでしょう。

 ガザ撤退の予想同様、ハマスの躍進を予想する研究所は 多くありましたが、第一党にまで躍進する事を予想する情報は少なかったと思います。 強力な野党として与党ファタファに対峙する対立軸を確立しようと目論んでいたハマ ス自身が最も驚き、最も当惑した選挙結果だったのではないでしょうか?

 ガザ撤退が予想に反してスムーズに行われた事とともに、まさに想定外は想定内。 先の読めないパレスチナ問題を如実に表わした出来事であったと思います。  



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