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誰にでもわかるパレスチナ問題(その46) 

NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳


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”イスラエルロビーとパレスチナ和平 3”

”イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策”  

 米国のイスラエルへの一方的とも思える支援が中東の安定、パレスチナ 和平への障害の1つであることは、中東について少し勉強すれば 誰にでも解るでしょう。
 また米国の外交政策決定に強い影響力を与えるイスラエルロビーの存在ついては 以前から認識されていて新しい話題ではありません。 ただ、今年、この問題を大きく扱った本が出版され論争の的になっています。
 ジョン・J・ミアシャイマー、シカゴ大学教授とスティーブン・M・ウォルト、 ハーバード大学教授の共著、  "イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策"
http://shop.kodansha.jp/ bc/books/topics/israellobby/は、 日本でも講談社から9月、10月に上下2冊が出版されました。 米国やドイツでは発売と同時にベストセラーになりました。 日本でそれほど話題になっていないのはこの種の話題にまだまだ興味が持たれていないからでしょう。


米国のタブーに議論の扉を開けた?

 ミアシャイマー、ウォルト両教授は著書で、イスラエル・ロビーに振り回される 外交政策は、米国の国益にならないし、イスラエルを特別扱いすることを 繰り返し批判しています。出版に際しても、イスラエル・ロビーからの大きな 圧力があったと詳細に述べています。
 イスラエルはパレスチナ人の権利を侵害して建国されたことを認めるべきであると書いています。 またイスラエル・ロビーがいかに巧妙に米国議会に影響を与え、 米国の中東政策を誘導してきたかを解りやすく書いています。 私自身はイラク戦争を始めるにあたりイスラエル・ロビーが米国に どれほど大きな影響を与えたかは少し疑問ですが、 この戦争によりサダム・フセイン政権が打倒され、イスラエルの安全が増した事は 否定できないと思います。 いまだ完全に消えない米国の対イラン攻撃の可能性も イスラエルのためであり、米国の利益にはならないという主張には 論理性があるのではと思ってしまいます。
 イランのアハムード・アハマディネジェッド大統領は「イスラエル抹殺発言」を 繰り返し地上からイスラエルの存在を消滅させると公式な場で挑発しています。

 前回も書きましたが、私は石油のために米国はイラク攻撃を行ない、 またイランをも攻撃する準備をしているとは考えられません。 アラブ諸国との関係を円滑にして友好関係を築く方が、少なくとも中東産油国からの石油を安定 的に確保出来ると考える方が現実的ではないでしょうか?
 少なくとも今までは公的に活発な議論がなされなかったイスラエル・ロビーの タブーをこじあけた書籍であると思います。


 ”イスラエル擁護論批判” ”ホロコースト産業”

 "イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策"が発売される直前、 2007年3月、ノーマン・G.・フィンケルスタイン著”イスラエル擁護論批判”  の邦訳本が三交社から出版されました。
http://www.sanko-sha.com/sankosha/editorial/books/items/168-7.htm
  フィンケルシュタイン氏はイスラエル・パレスチナ問題における米国の 代表的研究者の1人です。 両親ともナチ収容所からの生還者というユダヤ系米国人であり、 シオニズム、ホロコーストを特に研究テーマとして深く研究。 その結果イスラエルの被害者イメージとその利権に群がる同胞ユダヤ人に厳しい批判を 続けている。
 世界的に話題となった彼の前著"ホロコースト産業”(邦訳は2004年発行)
http://www.sanko-sha.com/ sankosha/editorial/books/items/158-2.html
  は簡単にいえば、米国のユダヤ人エリートがホロコーストを商売にしていると書いています。
 氏によれば、ホロコースト産業に従事するシオニストたちは、 ホロコーストを盾に、被害者の数を水増しするなどして多額の保証金を得ていると糾弾。 さらにそれらの保証金は一般のユダヤ人被害者の手には 十分に渡らず団体幹部達の高額給与やイスラエルの入植政策に使われているとも書いています。

 2007年10月21日、私は同志社大学新島会館でフィンケルシュタイン氏と 直接お話しする機会がありました。氏は同志社大学学際研究センター主催の国際 ワークショップの発表者の1人として参加されていました。 午後からのセッション「アメリカのパレスチナ・イスラエル外交を検証する」の発表前、 15分程、私はこれまで疑問に思っていた事を矢継ぎ早に質問させて頂きました。
 フィンケルシュタイン氏が、いつもの事だが、せっかく京都に来てもどこも見ていない、 世界のどこへ行っても観光をした事がないと笑いながら話されていたのが印象的でした。
 初めての日本で、広島、長崎は是非行きたいと残念がられているので、 次回は私が案内しますと名刺を渡しました。 「申し訳ない。日本到着後3時間で名刺切れになってしまって。」と謝る彼に 「次回日本に来る時は、洗面道具は忘れても名刺は1日100枚用意した方がいいですよ」と私が言うと 「 You are right !」と両手を大きく広げて笑っていました。


2つのホロコースト

 かつて広島を訪問したシモンペレス現イスラエル大統領は 「アウシュビッツと広島は20世紀の2つのホロコーストだ」と発言。 この発言を強く非難したのが、エリー・ヴィーゼル氏です。 ユダヤ系米国人で自らのホロコースト体験を自伝的に記し、 1986年ノーベル平和賞を受賞しています。
 「ホロコーストは人類史上類のない大事件だから他の出来事と比較してはならない」  このヴィーゼル氏の主張に、フィンケルシュタイン氏は 強い懸念を示している。どうしても広島へ行きたいと話していた彼の顔が、 今改めて思い出される。






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