誰にでもわかるパレスチナ問題(その51)
”シリア 2”
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NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳
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”ゴラン高原”
1967年の第3次中東戦争に勝利したイスラエルはシリアのゴラン高原を占領します。
1973年の第4次中東戦争で、シリアは一時これを奪還しますが、
最終的にはイスラエル軍に再び攻め込まれ、
結局イスラエルに再占領されます。シリア南西部に位置し、
イスラエル、レバノン、ヨルダンと国境を接する高原です。
ヨルダン川流域を見渡せることから、軍事戦略上重要な拠点です。面積は東京都の約半分、
沖縄本島と同じぐらい。水資源の乏しい中東にあって、冬には雪が降り、
その雪解け水のおかげで1年を通して水が豊富な地域です。水源確保の意味でも重要な拠点となっています。
イスラエル国防軍はゴラン高原を1967年から1981年まで占領して軍政下に置きます。
そして1981年、ゴラン高原併合法案をクネセット(イスラエル国会)で可決し、
自国の領土であると主張し始めます。国際連合、イスラエル以外の国際社会はこれを認めず、
ゴラン高原はイスラエルに軍事占領されたシリア領と考えています。
国連安全保障理事会は決議497「イスラエルの併合は国際法に対して無効である」を採択しています。
しかしイスラエル政府はあくまでも「併合」であるとの認識で、自国領土と主張しています。
ゴラン高原の戦略的重要性また水資源としての大きな価値がこの問題の解決をより困難にしています。
”何が問題なのか?”
当然シリアはイスラエルのゴラン高原からの完全撤退を要求しています。
現在ゴラン高原 にもおよそ1万6千人のイスラエル人入植者がいます。
入植者の大半はゴラン高原返還には反対しています。
イスラエル国内にもこの入植者を支持するグループがいます。
その反対勢力を押さえ込む強い政権が必要でしょう。
しかし入植者への対応がゴラン高原返還交渉の最も困難な問題ではないのです。
最も複雑な問題は大きく次の2つにわける事ができます。
1.撤退後のイスラエル・シリア間の非武装地帯の設置について、その範囲、広さの確定。
これはお互いの安全保障が守られる形をつくる事。
2.国境の設定。イスラエルとシリアは第1次中東戦争によってはっきりとした国境が定まっていない。
つまりどの時点までイスラエルが撤退するのかによって
ヨルダン川に流れる水資源の支配権やガリラヤ湖への権利が変わる。
恐らくこの2の水資源の問題が最大のネックになると思います。
イスラエル、シリアが交渉再開
この記事を書いている1週間前、2008年5月21日、
イスラエル、シリアが8年ぶりに交渉再開というニュースが流れました。
2000年から中断する和平交渉がトルコの仲介で再開したと両政府が発表しました。
焦点はもちろんイスラエルによるゴラン高原の返還問題ですが、
オルメルト、イスラエル首相は「困難な譲歩を行なう用意がある」 と公言しています。
イスラエルの最大の狙いはイスラエルを敵視するヒズボラ(レバノン)とハマス(パレスチナ)との関係断絶を
シリアに求める事にあるのです。今後の交渉が期待されるところです。
(写真)日本から送られた平和の折り鶴を市長室の壁にかけるエフッド・オルメルトエルサレム市長(現イスラエル首相)
2000年7月、松本公夫撮影
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