誰にでもわかるパレスチナ問題(その57)
”イスラエル右派政権誕生…和平へのプライオリティー”
NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
(その6)
(その7)
(その8)
(その9)
(その10)
(その11)
(その12)
(その13)
(その14)
(その15)
(その16)
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(その20)
(その21)
(その22)
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(その61)
(その62)
(その63)
(その64)
(その65)
”4コマ漫画”
1コマー小さな子供が大きな子に殴りかかる。
2コマー大きな子が「やったな、お返しだ」と殴り返す。そばで大きな子の父親が笑って見ている。
3コマーその父親は、「相手が手を出してきたら100倍にして返してやれ」と大きな子に話している。
4コマーポカポカ殴り続ける大きな子とあおる父親。それを見ていたある夫妻。
「まるでアメリカとイスラエルのような親子だなあ」と夫が言い、妻が「笑ってないで止めてあげなさいよ」と言う。
2009年1月8日朝日新聞夕刊、4コマ漫画の内容です。
小さな子ども・パレスチナ(ハマス)が大きな子ども・イスラエルに殴りかかり、お返しを受けている様子です。大きな子どもの父親はアメリカで、イスラエルとアメリカとの関係を痛烈に風刺しています。
”どちらが先に手を出したか?”
私個人としては、100パーセント的確に現状を表現しているとは思いませんが、中東情勢に関心を持つ人には話題になりました。イスラエルを擁護する人たちからの批判は予想される事ですが、親アラブと一般に言われている人たちからもマスコミの報道偏向だとして取り上げられました。
その理由は最初に手を出したのがパレスチナ側(ハマス)と描かれている点です。この4コマ漫画だけでなく、ほとんどの日本のメデイアはイスラエルは自爆テロ、ロケット攻撃にたまりかね2008年12月27日のガザ攻撃に及んだ、と報道し、これは事実ではないというのが親アラブ派といわれる人達の批判の要点です。
”ハマスが挑発”
ハマスは仲介のエジプトの強い要請を無視し、イスラエルとの停戦延長を拒否しました。2008年12月19日からイスラエルによるガザ空爆開始の12月27日まで300発近いロケットをイスラエル南部に打ち込みました。
そもそも、ハマスのロケット攻撃の要因を作ったのはイスラエルである等の議論とどちらが紛争を誘発したかは別の問題であると思います。
少なくても攻撃されて空爆に踏み切ったとのイスラエルの言い分を、ハマスはイスラエルに与えてしまったと思います。太平洋戦争緒戦で日本が真珠湾を攻撃したのは、理不尽な欧米列強の経済封鎖にあったと主張したとしても、日本が最初に攻撃した事実を否定することはできないと思います。
”選挙を控えて”
政権を担当する与党のカディマ、労働党にとって2009年2月10日の総選挙を控え、自国内に打ち込まれるロケット攻撃を容認することはできなかったでしょう。選挙を控えた政府が国民の安全を守るという姿勢を示したのでした。
本当の目的はハマスを弱体化させ,イスラエルの存在を認めるファタハがガザで力を盛り返す事を望んでいたと思います。また2006年のヒズボラとの戦争で失いかけた戦争抑止力を回復したいと考え、イスラエルを攻撃すれば、その代償は大きい事をアピールするものでした。
”選挙の結果”
選挙の結果はよくいわれることですが、イスラエルにとっての「和平」のプライオリティ(最優先課題)は、パレスチナ人やアラブ人と仲良くやっていこうという事ではなく、イスラエルの安全確保。戦争、テロの恐怖を取り除く事です。2009年2月10日のイスラエル総選挙はそのイスラエル人の安全保障に対する考えが結果として表れました。
”右傾化”
カディマ、労働党の連立政権による大規模なガザ攻撃の後も、ハマスによるロケット弾攻撃は完全に止まっていません。またイスラエルを敵視するイランの脅威も増してきたと、イスラエルの人たちは考えているようです。 そのような中で、2月10日の選挙ではパレスチナ人との共存を考えるより、自分たちの安全を第一との考えから、世論が大きく右傾化しました。
右派リクード党首のネタニヤフ元首相が首相に返り咲き。対パレスチナ強行派で1996年から1999年までの首相時代には中東和平は大きく停滞しました。リーベルマン新外相は超タカ派の政治家で、イスラエル国籍のアラブ人排斥を訴えています。中東和平に積極的に取り組もうとするアメリカ、オバマ政権と今後どのように折り合いをいをつけるかが、中東情勢の今後の焦点になるでしょう。
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