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誰にでもわかるパレスチナ問題(その59) 

NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳


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”ユダヤ人であることとイスラエルを否定することは矛盾しない”


前回に紹介した、ジェフ・ハーパー博士と同様、現在のイスラエル政府の対パレスチナ制作を強く批判する二人のユダヤ人学者を紹介します。


”サラ・ロイ博士”

米国ハーバード大学中東研究所上級研究員のサラ・ロイ博士はガザ研究の第一人者です。両親はポーランド系ユダヤ人で、強制収容所から生還、第2次世界大戦後米国に移住しました。つまり、彼女はホロコースト生存者の娘として米国で生まれました。 2009年3月5日、私は京都大学での彼女の講演を聞く機会を得ました。




”同じ論理で ”

 両親は敬虔なユダヤ教徒で、ロイ博士は幼い時から幾度となく両親に連れられイスラエルを訪問していました。ホロコーストの犠牲となった同胞を「弱いから、力がなかったから殺されたのだ」と、多くのユダヤ人が繰り返し語る姿が今も強く記憶に残っていると博士は語っています。 「パレスチナ人にも同じ論理で現在攻撃しているのではないか?」この疑問が現在の研究に取り組むきっかけであったと語っています。


”占領とは何を意味するのか?”

 1985年、博士論文を書くため、彼女は西岸とガザを訪問しました。そこで目にしたのはイスラエル兵のパレスチナ人への信じられない虐待でした。その夏、彼女の人生が変わったといいます。占領とは何か、占領とは何を意味するのか、それを彼女自身が身をもって理解したのです。その体験は幼い時、彼女の両親が語ったくれた逸話の数々とあまりにも類似していました。ナチスドイツ兵のユダヤ人に対する辱めと。



”痛みの同族化?”

 どうして私たちユダヤ人はパレスチナ人の基本的な人間性を受け入れられないのだろうか? 彼らを自分たちの倫理観で受け止めることができないのだろうか? と彼女は問いかけます。「私たちは自分たちが虐げているパレスチナ人と、いかなる人間的なつながりも拒絶している。単に、痛みの同族化、人間的な苦しみを被っているのは自分たちユダヤ人だけだという考えに固執しているように思える」と語っています。



”ユダヤ人知識人のダブルスタンダード ”



 世界中の人種差別・弾圧・不正義に抗議する多くのユダヤ人知識人が存在します。しかし、そんなユダヤ人知識人もイスラエルが加害者である場合は、それに反対することを受け入れられない現実があると彼女は語っています。それどころが、背教行為だと非難する人もいて、こうしたダブルスタンダードは絶対に終わりにすべきだとロイ博士は強調されています。



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(写真左)ヤコブ・ラブキン教授を迎えての「シオニズムを考える」勉強会
     亀岡大本本部第三安生館ミーティングルームにて(2009.6.29)




”ヤコブ・ラブキン教授”

旧ソビエトのレニングラード(現サンクトペテルブルグ)生まれのユダヤ人、ヤコブ・ラブキン、モントリオール大学教授は2009年6月29日から7月1日まで、亀岡、綾部を訪問。6月29日には亀岡大本本部で開催された「シオニズムを考える」勉強会の講師としてお話しいただきました。同志社大学一神教学際センターの招待で2度目の来日となった教授は、大阪大学、東京大学、広島大学、筑波大学等で精力的な講演をこなす合間の大本滞在でした。


”シオニズムに反対するユダヤ人”

 国際社会の流れは、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルとの2国間平和的共存がパレスチナ和平へのロードマップと考えています。これに対して、ラブキン教授は1948年のイスラエル建国にはじまる矛盾が解消されなければ、たとえパレスチナ国家が誕生してもこの地域の安定は期待できないと考えています。つまり、イスラエル建国思想であるシオニズム(パレスチナの地にユダヤ人の国を創るという考え)を根本的に見直さなければ、地域の平和は保てないと考えています。イスラエル建国に伴い多くのパレスチナ人に悲劇が起こった事実に背を向けず、この過ちを認めることから始めなければならないと訴えています。シオニズムは間違いだったと。



”一国共存にむけて”

 ラブキン教授はさらに、イスラム原理主義組織と言われるハマスやヒズボラも、シオニスト国家であるイスラエルを非難しているのであって、ユダヤ人を憎んでいるわけではないと断言しています。実際オスロ合意を含むすべての2国家間平和共存案は頓挫しています。ユダヤ人の為のイスラエル国家といった考えを捨て、パレスチナとの1国共存に向けた解決策を探るべきだというのが教授の考えです。「あまりにも理想的ですね」と述べる筆者に対して、「もうすでに、イスラエルは人口的にはユダヤ人国家ではない」とラブキン教授。「人口の3割は非ユダヤ人でその割合はどんどん大きくなっています」 と、静かに語っておられたのが、印象的でした。



”ユダヤ人としてのアイデンティティー ”

サラ・ロイ博士、ヤコブ・ラブキン教授も共に、ユダヤ人としてのアイデンティティーをしっかり持っています。ロイ博士は、両親から受け継いだものは、ユダヤ人の精神、寛容、共感、人の救済であり、これをしっかりと携えて生きていると語っています。また彼女にとってのユダヤ教とは証言すること、不正に対して怒り、沈黙しないことで、それは共感、寛容、救援を意味すると述べています。ラブキン教授は、敬虔なユダヤ教徒で、安息日には車に乗らず、マイクも使いません。もちろん食事もコーシャー(ユダヤ教の食事規定)をしっかり守っています。 ユダヤ人であることとイスラエルを批判することは矛盾しないのです。



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