コラム一覧へ   TOP 


誰にでもわかるパレスチナ問題(その61) 

NPO法人大本イスラエル・パレスチナ平和研究所
主任研究員 矢野裕巳


  (その1)   (その2)   (その3)   (その4)   (その5)   (その6)   (その7)   (その8)   (その9)   (その10)

(その11) (その12)   (その13)   (その14)   (その15)   (その16)   (その17)   (その18)   (その19)   (その20)

  (その21)   (その22)   (その23)   (その24) (その25)   (その26)    (その27)   (その28)   (その29)    (その30)


  (その31)   (その32)   (その33) (その34) (その35)  (その36)   (その37)   (その38)   (その39)    (その40)

-
  (その41)   (その42)   (その43)   (その44)   (その45)   (その46)   (その47)   (その48) (その49) (その50)


(その51) (その52) (その53) (その54) (その55) (その56) (その57)    (その58)   (その59) (その60)


(その61)  




”ユダヤ人はなぜ迫害されてきたのか?”



”ユダヤ教=旧約聖書
キリスト教=旧約聖書+新約聖書
イスラム教=旧約聖書+コーラン”

3つの宗教では、旧約聖書が共通になっています。これを見ても彼らの神が同じ絶対神であると思います。ちなみに旧約、新約と聖書を分けるのはキリスト教の考え方です。神がイスラエルの民とのみ交わした最初の契約を「旧約」、神がイエスを人々の元へと遣わす事によって、全ての人々と結んだ新しい契約を「新約」といいます。ふたつの契約を区別するために、キリスト教の視点から付けられた名称です。ユダヤ教では、旧約聖書を聖書と呼んでいます。イスラム教で、もっとも偉大な預言者はムハンマドです。そのムハンマドの言葉を集めたコーランを一番重要な経典にしていますが、旧約聖書にも敬意を払っています。
それぞれ偶像崇拝を禁じていますが、キリスト教、特にカトリックではイコン(聖像)、聖マリア像などがあり、ユダヤ教やイスラム教からみると偶像と思えるものも存在します。




”ユダヤ教とキリスト教の大きな違いは? ”

ユダヤ教とキリスト教の大きな違いは、イエスを救世主と認めるかどうかだと思います。旧約聖書の中に、救世主メシアの到来の記述があります。キリスト教ではイエスを救世主としていますが、ユダヤ教では救世主は未だ降臨していないのです。
ユダヤ教ではユダヤ人こそ唯一、神に選ばれた民であり、神との約束を実践すればやがて救世主が現れ、ユダヤ人の為の神の国が創られると教えられています。キリスト教はユダヤ人社会から生まれた新しい宗教で、イエス・キリストは、ユダヤ人だけでなく人類全体をその罪から救う為に身代わりとなり、磔になったと考えられています。ユダヤ人を対象にした民族色の強いユダヤ教、人類全体を救いの対象とするキリスト教と言えるでしょう。


”ユダヤ教とイスラム教の積年の争い? ”  

 現在のパレスチナ問題を宗教問題と結びつけて、ユダヤ教徒とイスラム教徒が長年にわたって、憎しみ合い、争いを続けてきたかのように考える人が多いかもしれません。
しかしユダヤ教徒とイスラム教徒が、友好関係を維持してきた歴史もかなり存在します。ユダ ヤ人への迫害は、イスラム教徒よりもヨーロッパのキリスト教徒がその責任を負わなけ ればならないと思われます。この事についても少しずつ、学んでいきましょう。まず、ユダヤ教とユダヤ人の歴史を日本人のもつ印象と共に述べたいと思います。

 



”ユダヤと名のつく出版物 ”

   Jewish Studies(ユダヤ学)やJewish History (ユダヤ史)のような出版物は世界中で出版されています。ユダヤ人の各分野における業績から考えれば当然かも知れません。欧米の有名大学には、ユダヤ研究なる組織が必ず存在します。また国際的なユダヤ研究の学会も毎年世界の各地で開かれています。
日本でも多くのユダヤと名のつく書籍が発行されています。その内容は主に2つに分かれていると考えられます。1つはビジネス関連。一言でいえば、ユダヤ人がいかに金儲けに優れているのかを説明しています。中には一般のユダヤ人が聞いたこともないようなユダヤの格言と組み合わせて述べているものもあります。
もう1つは、日本人がいかにユダヤ人と似ているかを、神道の伝統や建物、あるいは、ヘブライ語と日本語の類似点を強調する事が骨子の書籍です。中には、日本人もユダヤ人も同じ民族であると断言しているものも少なくありません。これらの内容は学問としてのユダヤ学とはかけ離れたものでしょう。



”日本人とユダヤ人”  

1970年、イザヤ・ベンダサン著「日本人とユダヤ人」が出版され、大ベストセラーになりました。 当時本誌まつごごろにも青年への推薦図書として載っていました。著者のイザヤ・ベンダさんは実在の人物ではなく山本七平さんでした。 多くの人がこの本を読まれていると思いますが、「日本人は、安全と水はタダだと思っています。」は印象的な言葉で、様々な場面で引用されています。日本の安全保障政策が世界から見て、ユダヤ人から見て、いかに幼稚であるかを示しています。日本人の特質を語るのに、ユダヤ人がその比較の対象として使っています。前駐日イスラエル大使エリー・コーヘン氏は、昨年2008年、「驚くほど似ている日本人とユダヤ人」を出版。大使時代、亀岡、綾部に来られた時にも日本人とユダヤ人の類似点を強調されていました。マーヴィン・トケィヤー氏なども日本神道の風習と古代イスラエルの風習がいかに似ているかについて書いた本が山のようにあります。 要は、世界中で出版されているユダヤに関する書籍のなかで、日本でのユダヤに関する本は特徴的にそのほとんどが、日本人のアイデンティティを語るためにユダヤ人の思考や風習を記述しているのです。




”ユダヤ人はなぜ迫害されるのか?”

  紀元後70年、エルサレムの陥落、第2神殿の破壊。以降、世界に離散した、国を持たないユダヤ人は、1948年のイスラエル建国までの間、その移住先の地域の人々とは同化せず、自分たちのアイデンティティを維持してきました。それは、ユダヤ教という独自の宗教共同体を持ち、それを守る事によって共通の意識を共有してきたからです。同時に自分たちの信仰に対するその強い信念が、キリスト教社会から強い反発を買ったのだとも言われています。 ただ私自身は、少なくても近代におけるユダヤ人差別は、イエスを処刑したユダヤ人を憎むといった宗教的偏見ではないと思います。教育水準が高く、経済、金融面での実力が移住先で顕著になるにつれ、移民に自国を乗っ取られたくないとの民族主義的な考えを持つ人たちにより差別や弾圧が行われたと考えます。近代国家の諸制度を巧みに利用しながら社会に進出するユダヤ移民への、ねたみと憎悪が出発点であると、私は考えます。次回はこのようなユダヤ人の苦難の歴史を勉強していきたいと思います。





※このサイトに掲載されている文章、写真などの無断転載・ 無断複製を禁じます。

前へ   次へ    


TOP