誰にでもわかるチベット問題(その2)
中道のアプローチ
人類愛善会チベット問題勉強会
世話人 矢野裕巳
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
中国のチベット制圧は中華思想から?
「1951年に始まる中国のチベットへの武力侵攻の根底には、中華思想がある」との主張をよく耳にします。
自分達が世界の中心にあると考える、自民族中心的な考え方です。
先日参加したチベット問題講演会の中でも、「この中華思想は他民族に対する漢民族の侵略を現実化する理論であり、
さらなる侵略を予定している侵略の哲学なのである。」と力説されていた学者もいました。
私自身は、自分達の民族を世界の中心に考える民族はこの世界に多く存在するであろうし、
また自分たちが特別な使命をもって生まれさせられていると考える民族も決して少なくないと思います。
中華思想がその他にも多く存在するエスノセントリズム(ethnocentrism、自民族中心主義)と、
どれほど違うのかはよく解りません。
ただ、中華人民共和国と同じ漢民族が中心である中華民国(台湾)が、
チベット問題、チベット仏教の大きな支援国家であるのはどうしてでしょうか?
私は中華思想について詳しく勉強した事がありませんが、
同じ民族でありながら、その宗教と深く結びついたチベット人やチベットに対するスタンスが違うのは、
中華思想というような理論ではなく明らかにその社会体制の違いにあるのではと思うのですが?
民族の違いだけではチベットの独立は主張できない
チベット問題についての書物にはよく次のように表現されています。
「 言語的にチベット語は中国語とは全く異なり、その語順は日本語やモンゴル語に近い。」
「民俗的特徴からみてチベット人は漢民族とは まったく異質である。」
しかし、チベット人の風習、伝統や身体的特徴が漢民族と異なる事を列挙しても、
その事でチベットが中国から独立すべきであるとか、
チベットは中国とは違う国でなければならないとは主張できないと思います。
世界のほとんど、いやすべての国家は複数民族によって構成されています。
日本も単純に単一民族国家とは言えないでしょう。
アメリカ、オーストラリア、南米の国々等、ある民族が他の民族の住んでいた土地を征服し、 土地を奪って国をつくりあげた例はいくつもあります。
もしこれらの国々の原住民の人達が自分たちの民俗的ユニークさを訴え、
一民族、一国家を旗印に独立を主張すれば、世界は大変な混乱に陥る事でしょう。
チベットはもともと中国の一部?
ここで問題となるのは、チベットが、中国共産軍の武力占領以前に、独立国であったかどうかです。
ほとんどの本ではそれぞれ中国側は「チベットはもともと中国の一部だった」と主張し、
チベット側は「歴史上チベットは中国の領土になった事は一度もない」と反論しています。
結論的にはこれはどうみても中国の言い逃れであり、武力侵攻をカムフラージュし、
意味のわからないチベット解放、との言葉まで使って正当化しようとしています。
「チベットは歴史的に中国の一部であったが、長い間外国の帝国主義者によって苦労してきた。
そのかわいそうなチベットを中国共産党が救ってあげた」これが中国の歴史を都合よく歪曲した見解です。
当時チベットには数人の外国人しか住んでいなかった事は事実として知られています。
皆さんも「セブン・イヤーズ・イン・チベット」という映画を見られた方もおられるでしょう。
ハインリッヒ・ハラーという実在の人物の生涯にスポットを当てた映画です。
ブラット:ピットが演じたことでも話題になりました。
この映画でも当時チベットには外国人がほとんど住んでいなかった事が詳しく描かれています。
チベットは明らかに独立国であったと思われます。
中国共産党のリーダー毛沢東自身もそのように考えていたはずですし、
そう考えていなければ出てこない発言も残っています。
(写真)ダライラマ14世(ダライラマ法王日本代表部事務所HPより)

中道のアプローチ
冒頭述べたように世界の多くの国家が複数の民族で構成されています。
またその国家の成り立ちでは、残念ながら決して平和的とは言えない形で成立した国もあるでしょう。
征服したもの征服された者達によって国が出来上がってきたのです。
しかし、ほとんどの人達が一定の民族としての文化や宗教を保つ事ができるところに
国家が存在するのではないでしょうか。
ダライラマ14世が提案されている「中道のアプローチ」があります。
簡単にいえば、チベットにおいてチベット人としての人権が守られ、
信仰の自由が保証され、チベットの文化が大事にされるなら、
チベットは中国の一部になってもいい、つまり独立を求めないとの考えです。
社会体制の問題やその他の少数民族問題を抱える中国は、決して これを認めないとの意見が大半です。
しかしこれは現実的で勇気ある考えであり、法王自身もおっしゃっているように、
中国にとってもプラスになる考え方だと思います。
この中道のアプローチについてはもう少し詳しく考えて見たいと思います。
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