モンゴル滞在記 (その2)
人類愛善会宗教協力推進室次長 山田歌男
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
(その6)
モンゴルにまたまた朝が来たぁ~ モンゴルはやっぱり寒かったぁ~(ウルルン調)
文房具贈呈の旅に出て2日目を迎えた。
モンゴルの夜明けは遅い。午前8時30分頃に日の出を迎え9時頃にやっと明るくなる。
冬期は日本と時差1時間のため日本時間では9時半の日の出だ。
早起きをしても暗くて寒いだけなので明るくなるまで部屋で待つしかない。
8時半過ぎにホテルを出る。やはり外は寒い。マイナス20度位だろうか。昨夜さんざんご馳走になったガンバートルさんのゲルに向かい朝食を頂くことにする。
温かい乳茶とパンを頂いていると、またまたお肉が出てくる。さすがに朝から肉料理を食べる元気はない。遠慮しているとまたまたウォッカを勧められる。
これも謹んで辞退して次の村へ出発することにする。
写真/道はタイヤの跡
村のはずれのガソリンスタンドで給油を済ませ、車は再び大平原に入る。この平原はアスファルト舗装など無く、
ただ前の車が通ったタイヤ跡が一筋はるか彼方へと延びているだけである。
30分程走ったところで車が止まった。ガンオチルさんがウォッカを持って車を降りた。するとウォッカを器に注いで空中へ撒いている。
バギーさんが「神様へのお供えですよ。この草原と山脈に足を踏み入れたときに、神様に挨拶するためにお酒をお供えするのです。
旅の安全をお祈りしましょう」と教えてくれる。モンゴルの人々の信仰心は素晴らしい。空に向かって撒かれたお酒が朝日に輝いている。
高々と酒が撒かれる
正午頃に次の村「オーヤンガ村」に到着する。このオーヤンガ村は大草原の真ん中にポツンとある集落である。
ポツンといっても人口数千人はあるだろう。しかし周りが広すぎるのだ。周囲2~30キロには草原ばかりで何もない。どうしてここに住んでいるのか、
どうやって住んでいるのか不思議でしかたがない。
村の小学校を訪ねると、村長が我々を待っていてくれた。村長がいうには子どもたちは午後1時過ぎに集まる予定という。
それまで村長の友人の家で食事を頂くことにする。
同行しているバギーさんは、出発前から風邪をひいており体調がすぐれない。中国へ出張したときにタチの悪い中国風邪をもらってきたのだ。
バギーさんは「鳥インフルエンザだよ。うつったらやばいよ」とまたまた冗談を言っている。食事前に村の薬局に立ち寄ることになった。
こんな村に薬局があるのかと思っていると、それがちゃんとあるのである。しかしどうみても薬局には見えない。
ここでバギーさんは注射器と抗生剤、飲み薬を買ってきた。
村長の知人の家に入ると、早速バギーさんの注射の準備が始める。注射を打つのはガンオチルさんの奥さんである。
抗生物質を生理食塩水で溶かし注射器に入れバギーさんのおしりに注射する。まるで日本の看護婦のような手際の良さだ。
あっけにとられてそれを見ているとバギーさんは「モンゴルではどの薬局でも自由に注射器と抗生剤が買えるよ。そして誰でも注射が打てるし、自分でも打つよ」。
私が「日本では医師と看護婦しか注射は打てないよ」というと「この10回分の抗生剤と使い捨て注射器で400円くらい。簡単なものだよ」という。
たしかに大草原に住むモンゴルの人は簡単に病院に行くことが難しいのだろう。各家庭に注射器など簡単な医療器があり、抗生剤や様々な薬が常備してあるという。
バギーさんが「山田さんも打つ?」と聞いてきたが「いや、やめておく」と答えておいた。信用しないわけではないが、ちょっと怖い。
写真右/主人とかわいい子どもたち
村長の友人の家では、羊肉をご馳走になる。これも洗面器大の器にドドンと出てくる。羊肉は、肉のくさみと歯ごたえがある独特の味わいだ。
よく噛めば肉のうまみが出てくる。なかなかいける。つづいて小龍包とウォッカも出てくる。主人の気持ちが嬉しい。家の子どもたちがいろいろとお世話をしてくれる。
かわいい子どもたちだ。主人のお言葉に甘えてウォッカを少々いただくことにしよう。
食事を済ませ小学校に向かう。学校に到着すると待ちかまえていた子どもたちに車を取り囲まれてしまう。子どもたちが進んで荷物を運んでくれる。
学校長に挨拶し、いつもと同じように先生達と協力しながら文房具の仕分け作業を行う。我々も手際が良くなってきた。
ここでは170組の文房具を配ることとなった。どこの小学校に行っても子どもたちの素直さと礼儀正しさには驚いてしまう。同じように説明をしながら文房具を渡す。
するとある教室で、女の子2人が御礼の気持ちを込めた歌を歌ってくれるという。女の子の歌声を聞きながら、思わずジーンとなってしまった。
写真下/歌を歌ってくれた女の子
この小学校での贈呈活動を終え、早々に次の村へ向かうことにする。次の村までは山越えがあり、かなりの難所だという。
車は村を後にして、山に向けてひた走る。
モンゴルには道の端に石積みのケルンをよく見かけることがある。これは「オボ」といい旅の安全を祈り石と木を積み上げたもので、
旅人はこのオボに供え物をし、時計回りに3回周り旅の安全を祈願するのだという。日本で言うとお地蔵さんのようなものだろうか。
皆につづいてオボの周りを回り神様に交通安全のご祈願をする。
車はいよいよ山に入った。周りは信じられないような光景である。まるでスキー場の斜面を車で上り下りするような道である。
しかし車はこの悪路をものともせず、どんどん進んでゆく。バギ運転手の運転技術の高さには本当に驚く。この写真(下)を見て頂ければ私の
言いたいこともわかっていただけるだろう。

次の村に着いたときには、すっかり日も落ちてしまった。この村にはガンオチルさんの奥さんの実家があるという。
本日の夕食はそこでいただくことにする。
それではここでモンゴルのゲルについて紹介しよう。
ゲルとはモンゴルの移動式円形住居である。都市部ではマンション、アパート、一戸建てが普通だが、郊外や田舎はまだまだゲル住居が多い。
ゲルは組み立て・解体が可能である。モンゴルは遊牧民族で家屋ごと草原を移動するためゲル式住居が考案されたのだ。
骨組みは木製で、フエルトの内装材にテント地の覆いが被せてある。保温断熱性が高く外気温がマイナス20度でも、
ストーブ一つで室内は25度前後に保たれている。中に入ると暑いくらいで、子どもたちは室内では半袖Tシャツで過ごしている。
室内はいたって簡素である。中央に薪のストーブがあり、中央奥と左右に3台のベッドがある。
家族が多くても少なくてもベッドは3台しか置けない。家族が多い場合は子どもたち2~3人で1台のベッドを使う。
左奥には仏壇があり小さな仏像や曼陀羅、ダライ・ラマや仏像の写真が飾られている。モンゴル人のほとんどはモンゴル仏教を信仰している。
これはチベッド仏教と同じ流れの仏教である。
ゲルには必ず仏壇がある
ベッドの間にはタンスが置かれていて日用品や衣類が収納されている。持ち物は簡素で数が少ない。
タンスには家族や親戚の写真がよく貼ってある。遠く離れた家族の事「つも思い出すためだ。モンゴル人は本当に家族思いである。
タンス。家族の写真が貼ってある。
入り口の左右には調理台・簡単な洗面台・食品庫・電気冷蔵庫がある。洗濯機が置かれているところもある。どの家庭にもカラーテレビとDVDが置いてある。
普及率は100パーセントだ。大草原にあるゲルでも、ソーラーパネルで発電し衛星受信でテレビを見ている。これは日本より進んでいる。何か奇妙な感じである。
あと余談だが、最近ではNHKの「プロジェクトX」がモンゴル語に翻訳されて放映され、「日本はすごい」と日本人株が急上昇しているらしい。
「冬のソナタ」や「チャングムの誓い」は日本より1~2年前に放映され、すでにブームは終わり話題にもなっていない。
ゲルには電気はあるが水道はない。水は井戸水か清流から汲んでくるので貴重である。水汲みは子どもたちの仕事である。
モンゴルの女性は水の使い方も上手だか捨て方も上手である。それはゲルには下水道もないからだ。
調理は主に中央のストーブで水を沸かし、食材を加熱・調理する。最近は電気の蒸し器や電子レンジを使う家庭も多い。
トイレは屋外にある。シャワー室はない。田舎のゲルではお風呂に入る習慣はなく、夏は水浴び、冬は身体を拭いて清潔にしている。
たしかにこの厳寒でお風呂に入っていたら風邪をひいてしまうし、空気が乾燥しているのであまり汗をかかない。
これがモンゴルのゲルの暮らしである。日本のような個別の部屋は無い。家族一間で過ごしている。2世代3世代が同居しているゲルもある。
ゲルの中でいつも家族全員が同じ話をし、同じ話題で笑っている。家族の間で隠し事など無いし出来ないのだ。バギーさんに「うらやましい家族の姿だね」というと、
バギーさんは「子どものときは楽しくて良いけど、成長して高校生くらいになったら苦痛だよ。だれも早く独立したいと思うよ」という。それもわかる気がする。
写真下/親父さんと一杯やる。
日本の田舎の親父さんと一緒だ
ここでもお肉とウォッカをいただく。親父さんは一年ぶりに娘(ガンオルチさんの奥さん)と会えて嬉し泣きに泣いている。その親父さんとウォッカを酌み交わす。
バギーさんは相変わらず風邪でつらそうだ。また注射をおしりに打っている。
さんざん食事とお酒をいただき、随分酔いも回ってきた。ガンオルチ夫妻を残して宿に向かうことにする。
副村長をしている親父さんの息子さんの案内でホテルへ向かう。5分ほど歩いてホテルに到着した。しかしホテルではクリスマスパーティーでどんちゃん騒ぎの最中だ。
「ここでは眠れないでしょうから、学生寮でお休み下さい」と寄宿舎へ宿を変更する。
途中、夜空を見上げると満点の星空だ。天の川がはっきり見えている。まるでプラネタリウムにいるようである。星があまりに多いので、
じっと見ていると酔ってきそうな感じがする。昴もまたたいている。オリオン星座は地上から低い位置に見える。この美しい星空を見るだけでもモンゴルに来る価値はある。
寄宿舎に着くとここでも学生たちがパーティーをやっている。皆楽しそうに踊っている。小学生から中学生の学生たちだ。寮母さん達の案内を受け部屋に入る。
学長さんがやってきて歓迎を受ける。今日ばかりは先生たちもお酒を楽しんでいるのか、皆陽気でよくしゃべる。クリスマスケーキとウォッカを勧められる。
「この田舎ではケーキはめずらしいですよ。精一杯の歓迎ですよ」とバギーさんが教えてくれる。ケーキとウォッカを有り難くいただく。
すると寮母さんか「一緒に学生達と踊りませんか」と勧める。ダンス会場に案内されて学生達と一緒に踊る。学生たちの歓声が上がる。
私のダンスは学生達に大うけだ。あまりに恥ずかしいので写真は掲載できない。
しばらくすると就寝の時間だ。学生達も一斉に解散し各部屋に戻っていく。私たちも休むことにする。
さっきまでの騒ぎが嘘のように寄宿舎が静まりかえった。
(12/24終わり)
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