2012年冬号 of aizenkai

《主張》
人類愛善新聞2012年冬号

“食”を守る強い決意を

TPPと日本の農業


 野田佳彦首相が昨年11月にハワイで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の方針を世界に示した。
 TPPでは、例外を設けず関税をなくす他、非関税障壁の撤廃を原則とし、米国を含む9カ国で、現に21の分野で交渉が進められている。
 戦後、日本は貿易立国を旨として繁栄してきた。しかし、現在では少子高齢化に伴う労働・消費人口減少も進む。海外市場を取り込むことでこうした閉塞状況を打破できるなどとして、産業界は日本のTPP加盟を後押ししている。
 一方、海外企業の日本市場への参入により、医療分野では日本の国民皆保険制度が維持できるか、公共工事分野では中小企業が存続可能か、金融保険分野では国民資産が保全されるかなど、懸念材料は多い。
 特に農業界では、安価な外国産農産物の輸入で日本の農業が壊滅するのではないかという大きな不安がある。農林水産省の試算によれば、TPPに加入した場合、日本の食糧自給率は現状でも低い40%(カロリー基準)から13%にまで下がり、食糧安全保障が大きく損なわれてしまう。野田首相は、食糧自給率を上げると明言したが、具体案は示されていない。首相の姿勢は商工業を重視し、農業と食糧問題を軽んじているように見える。
 国際紛争や気候変動・環境・人口問題からも、世界の食糧が今後充足される保証はない。日本が食糧を海外からの輸入に大きく依存する体制は大変危うい。
 また、わが国の食品安全基準を緩和させる圧力が高まる可能性がある。残留農薬の規制値や遺伝子組み換え食品の表示義務などだ。
 TPP交渉で主導権を握るアメリカが自国農産物の輸出促進のため、相手国の規制撤廃・緩和を要求してくることは十分に予想される。
 人の健康と環境に危険な遺伝子組み換え作物は、90年代後半に輸入が始まり、人類愛善会、消費者団体などは、組み換え作物使用の有無を食品上に表示するよう国に求め続けてきた。なし崩し的にこの表示義務が撤廃されてはならない。
 出口直日人類愛善会三代総裁は、「〈食〉というものが、私たちの人生にとって、人間社会にとって、どれだけ重要な地位にあるかは、誰でもがチョット考えてみれば分かることでありながら、実際には〈食〉について根本的なことがらが、あまり考えられていないのではないでしょうか。
 ことに食物をつくる〈農〉というものは、この現実において、何に先行さしても考えるべきことがらでありましょう。政治は、農民を大切にしてこそ、ほんとうの正しい政治が行われるのです。農を中心にしてこそ、国の経済も文化も、本当に立直るものであることを、わたしはかたく信じます」と述べている。
 「農は国の大本」であり、「天産物自給自足(地産地消)」が本来の農業のあるべき姿だと、出口王仁三郎人類愛善会初代総裁は示した。
 農業をはじめ様々な分野で課題があるなかでのTPP交渉は、国民の生命・安全を守る政治本来の使命に立ち、譲れない事項については譲らない強い姿勢で取り組まなければならない。誤った判断は、国を滅ぼすことにつながる。


ページの先頭へ