2014年冬号 of aizenkai

《主張》
人類愛善新聞2014年冬号

食の安全を守ることが政治の使命

正念場を迎えたTPP交渉



 2013(平成25)年3月に安倍晋三首相がTPP交渉参加を日本政府として改めて表明してから、9カ月が経過した。交渉では日米の厳しいせめぎ合いが続いている。
 TPPは、当事国の交渉担当者以外には内容が秘密とされる経済連携協定で、貿易、医療、金融・保険、知的財産など幅広い21分野で例外のない関税や非関税障壁の撤廃を目指している。
 しかし、どの国も文化や歴史・経済規模が違い、独自の産業構造があり、保護育成したい分野も違うため、交渉は簡単には進まないのが当然である。
 交渉参加12カ国の経済規模は、米国67%、日本20%、オーストラリア4%、その他7カ国合計9%(2009年GDPベース)であり、日米の比率が圧倒的に高い。日米交渉がTPPの行方を大きく左右するのである。
 米国は、日本に対する輸出その他の権益拡大を主要目的としている。その主張は、農産品・薬品・金融などの巨大な多国籍企業が君臨する業界の主張そのものといっていい。
 業界の圧力は強大で、俗称〝モンサント保護法〟により遺伝子組み換え食品による米国国民の健康被害の立証責任は消費者側にあるとされ、消費者側が科学的に被害を立証しない限り、生産や販売側企業が生産販売を中止させられることはないと定めている。
 しかも政府高官とこれら業界役員との間には「回転ドア方式」と皮肉られるほど頻繁な役席交代が常態化している。米国政府の主張は、こうした業界と一体化した米国基準を参加国に押し付ける〝われよし、強いもの勝ち〟の色合いが濃い。
 TPPは国際条約であり、成立すれば参加国の国内法に優先する。これに反する国内法規は早晩改定させられる。改定しない国内法規のために損害を被ったとする海外企業には、進出先の政府を世界銀行の下にある国際評決機関に直接訴え、国内法規の改定や損害賠償を請求する権利(ISD条項)が認められる公算が大きい。
 TPP交渉には、食・農のほか、医療、金融・保険、知的財産、サービスなどの国民生活にとって重要な多くの分野も含まれる。
 日本は、とりわけ国民の生命と健康を守るため、農と食の安全を守る国内規制は断固として護持しなければならない。米国の狂牛病肉の輸入検査基準は、すでに緩和されてしまったが、遺伝子組み換え食品の表示や収穫後の防腐剤(ポストハーベスト農薬)使用規制などは今後も堅持していかねばならない。食は国の文化の基本である。自由貿易の美名に目をくらまされてはならない。
 私たちは、人類愛善会の歴代総裁により「天産物自給自足」「農は国の大本」「農を中心にしてこそ、国の経済も文化も立ち直る」と教えられており、食・農・環境の活動に力を注いできた。
 実際に土に触れ、作物を育てることによって、火・水・土の恩を体験することが大切である。このような天地の恵みに触れる体験を通してこそ、農と食の本来のあり方を学ぶことができるのである。
 TPP交渉では、政府にきちんと日本の立場を主張し、固有の気候風土に培われた日本の農業と食物の安全、国民の生命と健康を守る強い姿勢を望みたい。
 〝農と食の安全〟は物心両面において〝聖域〟であり、それを守るのが国の政治本来の使命である。

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